アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は皮膚の外的刺激から防御する能力であるバリア機能の低下と過敏に反応する体質(アレルギー体質)によって生じる、痒みを伴う湿疹が、慢性的に悪化や改善を繰り返す皮膚病です。
遺伝的傾向と、生活環境の因子が複合して生じるのがアトピー性皮膚炎です。

アトピー性皮膚炎の原因

  • アトピー性皮膚炎の悪化には、アレルギー反応やバリア機能の障害がかかわってきます。
  • ひとりひとりに個別の悪化要因がありますが、共通の悪化原因として、乾燥、発汗、皮膚の汚れ、ストレスまた、皮膚を掻く行動も大きな悪化要因となります。
  • 室内のほこりや、布団やぬいぐるみのダニが原因の場合があります。また、ペットの毛なども原因になります。
  • 石鹸、ボディーソープ、シャンプー、リンスなども皮膚に刺激になる場合があります。

アトピー性皮膚炎の治療

  • 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに基づき、ひとりひとりの症状に合わせた標準治療を行います。
  • アトピー性皮膚炎の痒い湿疹の症状を抑えるには、ステロイド外用剤が有効です。
  • ステロイド外用剤は有効性が確かな薬です。また種類が多く、症状に応じて柔軟に調整できます。

TARC検査

  • 白血球走化作用を持つケモカインの量を図る血液検査であるTARC(Thymus and activation-regulated chmokine)によって、アトピー性皮膚炎の病態を客観的に数値化することができるようになりました。
  • アトピー性皮膚炎が重症の状態の場合ほど、数値が上昇し、寛解に向かうほど減少します。
  • TARC検査が生まれたことで、皮膚状態は改善をしてきていても、重症度が高くまだ治療のゴールに達していない場合があることが分かってきました。TARCの数値が正常化する前に治療を中止すると、症状はすぐに悪化してしまいがちです。
  • 月に1回程度の検査を持続することで、薬をやめるタイミングを間違いにくくなります。

内服薬での治療

  • 抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬など、アレルギー症状やかゆみをおさえる薬を内服することがあります。
  • 症状が悪くないときにも、予防的な意味からも服薬することがあります。
  • 重症化した場合は、免疫抑制の飲み薬を一定期間使うことがあります。強い薬のため、医師の指示のもと、正しく服用する必要があります。

ステロイドについて

  • 短期間でしっかりと炎症を抑える効果が期待できます。正しく使用すれば、少ない副作用で大きな改善が望めます。
  • 炎症の起こっている状態を火事に例えるならば、拡大を防ぐには、ステロイド(消火剤)で早めに火事を抑えることが重要になってくると言うことです。
  • また、誤解されているものに、ステロイドの色素沈着が上げられますが、ステロイド外用には色素沈着を起こす副作用はありません。
  • 色素沈着は湿疹が原因であり、テロイド外用が原因ではありません。そのため、いかに早い段階で湿疹を抑えることができるかが、色素沈着を防ぐ重要なカギとなります。

保湿

  • 皮膚の乾燥は、皮膚のバリア機能を落とし、症状を悪化させたり治りにくくさせたりします。保湿剤をつかって、十分な保湿を心がけることが大切です。
  • 水分やセラミドを補うもの、油分で皮膚を覆って水分の蒸発を防ぐものなど、いくつかのタイプがあります。剤形にもクリーム、ローション、軟膏などがあり、保湿効果や使用感が異なります。
  • 医師に相談をして、自分の皮膚に合ったものを選びましょう。症状が治まっているときでも、保湿だけは頻回にマメに行うことが大切です。